百人一首:歌番号031~040現代語訳・品詞分類など

031:朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪

歌番号:031
作 者:坂上是則(さかのうえのこれのり)
原 文:朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
読み方:あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
決まり字:6字
<品詞分類>
朝ぼらけ(名) 有明(名)の(格助)月(名)と(格助) 見る(動・マ上一・連体)まで(副助)に(格助) 吉野(固名)の(格助)里(名)に(格助) 降れ(動・ラ四・命令)る(助動・存続・連体)白雪(名)
<現代語訳>
夜が明けるころ、あたりがほのかに明るくなって、有明の月が照らしているかのように、吉野の里には白雪が降り続いているよ。
<語句語法>
あさぼらけ:夜が明けてきて、明るくなってくる頃。
有明の月:陰暦で十六日以降に見られる、明け方になっても空に残っている月
みるまでに:「~と見間違える」という意味が込められているので、現場に有明の月は出ていないことがわかる
<表現技法>
☆体言止め

032:山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり

歌番号:032
作 者:春道列樹(はるみちのつらき)
原 文:山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
読み方:やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
決まり字:3字
<品詞分類>
山川(名)に(格助) 風(名)の(格助)かけ(動・カ下二・連用)たる(助動・存続・連体) しがらみ(名)は(係助) 流れ(動・ラ下二・連用)も(係助)あへ(動・ハ下二・未然)ぬ(助動・打消・連体) 紅葉(名)なり(助動・断定・連用)けり(助動・詠嘆・終止)
<現代語訳>
山の中を流れる谷川に風が架けたしがらみがあるが、それは実は流れることもできないでいる紅葉だったのだよ。
<語句語法>
山川:「やまがわ」と読む。「やまかわ」と読むと「山と川」という意味になる。
しがらみ:漢字で「柵」と書く。川の流れをせき止めるために杭を打って竹などを編み込んだもの。風が架けたということで、擬人法が使われている。
<表現技法>
☆擬人法:『風』が「しがらみ」を『架ける』

033:ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ

歌番号:033
作 者:紀友則(きのとものり)
原 文:ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ
読み方:ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ
決まり字:2字
<品詞分類>
ひさかたの(格助) 光(名)のどけき(形・ク・連体) 春(名)の(格助)日(名)に(格助) 静心(名)なく(形・ク・連用) 花(名)の(格助)散る(動・ラ四・終止)らむ(助動・推量・連体)
<現代語訳>
日の光がのどかに降り注ぐ春の日なのに、桜には落ち着いた心がないので、花を散らしてしまうのであろう。
<語句語法>
ひさかたの:枕詞。「天」「空」「日」「月」などにかかる。
静心:落ち着いた心。
花:ここでは「桜」のこと
<表現技法>
☆枕詞:『ひさかたの』⇒『光』
☆擬人法:「桜」を「心」を持つ人間であるかのようにとらえている

034:誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに

歌番号:034
作 者:藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
原 文:誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
読み方:たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
決まり字:2字
<品詞分類>
誰(代)を(格助)か(係助)も(係助) 知る(動・ラ四・連体)人(名)に(格助)せ(動・サ変・未然)む(助動・意志・連体) 高砂(固名)の(格助) 松(名)も(係助)昔(名)の(格助) 友(名)なら(助動・断定・未然)なく(助動・打消・未然(ク語法))に(接助)
<現代語訳>
いったいこれからはだれを親しい友とすればいいのだろうか。長寿の高砂の松も昔からの友ではないのだから。
<語句語法>
知る人:自分を理解してくれる人。親しい友人。
高砂の松:高砂は現在の兵庫県高砂市。松の名所として知られ、「高砂の松」は長寿の象徴として用いられる。
昔の友:昔から親しく付き合ってきた友人
ならなくに:「…なくに」は「…ではないので」という意味。平安時代には懐古的な表現としてよく用いられていた
<表現技法>
☆二句切れ
☆倒置法

035:人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

歌番号:035
作 者:紀貫之(きのつらゆき)
原 文:人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
読み方:ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
決まり字:3字
<品詞分類>
人(名)は(係助)いさ(副) 心(名)も(係助)知ら(動・ラ四・未然)ず(助動・打消・終止) ふるさと(名)は(係助) 花(名)ぞ(係助)昔(名)の(格助) 香(名)に(格助)にほひ(動・ハ四・連用)ける(助動・詠嘆・連体)
<現代語訳>
さあ、あなたはどう思っているだろうか?人の気持ちは私にはわかりませんよ。馴染みの深い土地では、梅の花だけが昔と同じ香りで匂っているよ。
<語句語法>
人は:この歌を送った相手、この場合、紀貫之が長谷寺参詣の際に常宿としていた宿の主人をさす。
いさ心も知らず:「いさ」は打消しの言葉(この句では「ず」)を伴って、「さぁ、…ない」という意味となる。相手を軽くいなすときに使う言い回し。
花:短歌で一般的に花と言えば「桜」だが、この句では「梅」を指す。
<表現技法>
☆二句切れ

036:夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ

歌番号:036
作 者:清原深養父(きよはらのふかやぶ)
原 文:夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
読み方:なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
決まり字:2字
<品詞分類>
夏(名)の(格助)夜(名)は(係助) まだ(副)宵(名)ながら(接助) 明け(動・カ下二・連用)ぬる(助動・完了・連体)を(接助) 雲(名)の(格助)いづこ(代)に(格助) 月(名)宿る(動・ラ四・終止)らむ(助動・推量・連体)
<現代語訳>
夏の夜は、まだ宵のうちだと思っているうちに明けてしまったが、いったい雲のどのあたりに月は宿をとっているのであろうか。
<語句語法>
宵:夜に入って間もないころ
ながら:「~のままの状態で」という意味
いづこ:場所を示す代名詞で「どこ」という意味
<表現技法>
☆擬人法:「月」が「宿をとる」

037:白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

歌番号:037
作 者:文屋朝康(ふんやのあさやす)
原 文:白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
読み方:しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
決まり字:2字
<品詞分類>
白露(名)に(格助) 風(名)の(格助)吹きしく(動・カ四・連体) 秋(名)の(格助)野(名)は(係助) つらぬきとめ(動・マ下二・未然)ぬ(助動・打消・連体) 玉(名)ぞ(係助)散り(動・ラ四・連用)ける(助動・詠嘆・連体)
<現代語訳>
白露に風がしきりに吹きつけている秋の野のさまは、まるでひもで止めていない玉が散り乱れているようであったよ。
<語句語法>
白露:「露」が草派の上で「白く」輝いているのを強調している
風の吹きしく:「しく」は「頻く」と書き、「しきりに…する」の意味
玉:ここでは「真珠」穴をあけていくつもひも(緒)で通して装飾具として使われた。白露をひもを通さなかったために散らばってしまった「真珠」に見立てている
<表現技法>
☆係り結び:玉『ぞ』散り『ける』

038:忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな

歌番号:038
作 者:右近(うこん)
原 文:忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
読み方:わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
決まり字:3字
<品詞分類>
忘ら(動・ラ四・未然)るる(助動・受身・連体) 身(名)を(格助)ば(係助)思は(動・ハ四・未然)ず(助動・打消・終止) 誓ひ(動・ハ四・連用)て(助動・完了・連用)し(助動・過去・連体) 人(名)の(格助)命(名)の(格助) 惜しく(形・シク・連用)も(係助)ある(補動・ラ変・連体)かな(終助)
<現代語訳>
忘れ去られる私のことはどうでもいいのです。ただ、いつまでも愛してくださると神に誓ってくださったあなたが神罰を受け、命を落とすことになるのが惜しまれてしかたありません。
<語句語法>
忘らるる:「るる」は受け身の助動詞である
身をば:「ば」は本来、強意の助動詞「は」である。格助詞「を」に続くときは濁音化して「ば」となる
誓ひてし:この場合、「神に誓う」ことを意味する
惜しくもるかな:「惜し」には「自分を裏切った相手への気の毒に思う」皮肉の意味と、「相手の命が無くなる」ことに対する意味が込められている
<表現技法>
☆二句切れ

039:浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき

歌番号:039
作 者:参議等(さんぎひとし)
原 文:浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき
読み方:あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
決まり字:3字
<品詞分類>
浅茅生(名)の(格助) 小(接頭)野(名)の(格助)篠原(名) しのぶれ(動・バ上二・已然)ど(接助) あまり(動・ラ四・連用)て(接助)など(副)か(係助) 人(名)の(格助)恋しき(形・シク・連体)
<現代語訳>
浅芽の生えている小野の篠原の「しの」ではありませんが、しのび続けて我慢してきたあなたへの思いがもう我慢できません。どうしてあなたのことがこうも恋しいのでしょうか。
<語句語法>
浅芽:竹の短い茅(ちがや)
篠原:細い竹の生えている野原
しのぶれど:「しのぶれ」は「しのぶ」の已然形。人に知られないように心に秘めているということ。
あまりてなどか:「あまる」は多すぎてあふれるという意味。「などか」は反語で用いられる場合が多いが、この売位は「疑問」となる
<表現技法>
☆序詞:第二句まで。同音反復の序詞

040:しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで

歌番号:040
作 者:平兼盛(たいらのかねもり)
原 文:しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
読み方:しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
決まり字:2字
<品詞分類>
しのぶれ(動・バ上二・已然)ど(接助) 色(名)に(格助)出で(動・ダ下二・連用)に(助動・完了・連用)けり(助動・詠嘆・終止) わ(代)が(格助)恋(名)は(係助) 物(名)や(係助)思ふ(動・ハ四・連体)と(格助) 人(名)の(格助)問ふ(動・ハ四・連体)まで(副助)
<現代語訳>
人に知られないようこらえてきたけれど、とうとう顔色や表情に出てしまっていたのだった。何か恋でもしているのではないか、と人が問うほどにまで。
<語句語法>
しのぶれど:「しのぶれ」は「しのぶ」の已然形。人に知られないように心に秘めているということ。
色:ここでは「顔色」「表情」
色に出でにけり:「けり」は初めて気が付いた感動を表す。ここでは、人から恋でもしてるのかと言われて初めて顔に出ていたことに気が付いたことをさす。
ものや思ふと:「もの思ふ」で「恋の物思いをする」という意味になる。「や」は疑問の係助詞で、「思ふ」は連体形となる(係り結び)
<表現技法>
☆二句切れ
☆倒置法
☆係り結び:もの『や』『思ふ』と

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