中学地理で出てくる気候区分。その中で1,2位を争うほど記述問題が出される『西岸海洋性気候』。今一度、その特徴と記述のポイントをおさらいしておきましょう。
西岸海洋性気候の特徴
『高緯度のわりに温暖な気候』であることが一番の特徴でしょう。
『高緯度』というのは緯度が高い、つまり北半球で考えると『北』の方にあるということです。
西岸海洋性気候が多くみられるヨーロッパ州ですが、日本の北海道よりも北の地域がたくさんあります。
北海道は『冷帯』に属しますが、そこより北にあるのに『温帯』でいられるんです。
なぜ高緯度なのに温帯でいられるのか
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多分、ヨーロッパの人から見たら、『日本は低緯度なのに冷帯がある』とでも言われるんでしょうか?
それはさておき、『なぜ高緯度なのに温暖なのか』に対する解答が記述問題でのキーワードになってきます。
そのキーワードは『海流』と『偏西風』です。一つずつ見ていきましょう。
大西洋の海流
『大西洋』はヨーロッパの西にある世界3大洋の一つです。
赤道近辺から流れ始めてアメリカ南部のメキシコ湾を通り、北大西洋の大半をめぐっている『暖流』です。
最終的に、ヨーロッパ西部沿岸やイギリス西部から北部沿岸まで流れてきます。
『暖流』は簡単に言うと『暖かい海水の流れ』となります。
偏西風
高高度で常に吹いている西風のことです。
地球が太陽で温められることによる『空気の対流』と地球の『自転』が影響しています。
この偏西風はおおよそ北緯30度から60度の間で吹いています。
ちょうどヨーロッパ本土やイギリスが含まれていることに注目してください。
※南半球の同緯度でも同じ方向で偏西風が吹いています。たまに、南半球は逆、などと説明している人もいますので注意してください。常に吹く東風は赤道付近の『貿易風(偏東風)』と北極南極付近に吹く『極東風』です。
西岸海洋性気候の仕組み
ヨーロッパの西の海を流れる『暖流』は『暖かい海水』です。
すると海面付近は、『暖流』によって『暖められ』ます。
その暖められた空気が『偏西風』によって、ヨーロッパ西部に流れ込みます。
このようにして、一年中、ヨーロッパ西部には暖かい風が流れ込んでくる仕組みがあります。
これが、『西岸海洋性気候』の仕組みとなるわけです。
『高緯度まで暖流が流れてくること』『偏西風が吹いていること』がポイントとなります。
西岸海洋性気候と温暖湿潤気候の違い
西岸海洋性気候は『温帯』に属します。
私たちが住んでいる日本も温帯に属しますが、その気候区分は『温暖湿潤気候』になります。
西岸海洋性気候の特徴は『高緯度のわりに温暖である』でしたが、さすがに高緯度なだけあって、そこまで気温は上がらないと考えるのがいいでしょう。
具体的には月の平均気温が『22度』以上にならない、雨温図で考えると20℃と30℃の間を4つに分けたうちの20℃よりの1メモリまででしょうか。
※ちょっと、見にくいというのは否定しません。
ただ、『海洋性』と名が付くだけあって、『海』の影響を1年を通して受けます。
そこで、冬に注目してみましょう。
水は熱を保つ力が強いです。冬のお風呂を考えてください。
お風呂場はすぐに寒くなるのに、お風呂のお湯はしばらく暖かいですね。
それと同じで、冬に流れてくる『暖流』も温かいのです。
つまり、冬も影響を受けて『ある程度温暖』となり、夏と冬の寒暖差が少なくなります。
なお、日本の温暖湿潤気候では、冬に『大陸』の影響を受けます。
お風呂場の気温が下がりやすいのと同じで、大陸の温度も冬になると下がりやすいです。
冬はシベリア気団と北西の季節風の影響で、冬はとても寒くなります。
夏は最高!冬は…
コメント欄でご指摘を受け、追記しました。ありがとうございます。(2018.11.22)
ロンドンを例にとりましたが、雨温図のデータはあくまで『月平均気温』です。
夏の日中は30℃を超えることもあれば、冬は0℃を下回ることも。
日本の1月平均気温で言うと、東京が「約5℃」、仙台が「約1℃」です。
両方とも普通に0℃を下回ることありますよね。
また、ロンドンは高緯度にあるため、冬の日照時間が短いのです。
日の出は8時前、日の入りはなんと午後4時前となります。
夜が長い分、朝の冷え込みは強いようです。お出かけの際にはご注意を……
※ロンドン6月の日没時間は夜9時過ぎくらいです。
西岸海洋性気候の記述対策
特徴と原因をよく問われます。
特徴の文言は『高緯度のわりに温暖である』で確定です。文字数に応じて表現を少し変えたらいいでしょう。
原因のキーワードは『暖流』と『偏西風』です。
文字数が足りない場合は『暖流』を詳しく説明する場合は、『北大西洋海流』と正式名称を使うか、『ヨーロッパ沿岸の大西洋を流れる』などと付け加えればよいでしょう。
原因を問われた場合の基本解答は以下の通りです。
☆暖流と偏西風の影響で、高緯度のわりに温暖である(23字)
☆ヨーロッパ沿岸の大西洋を流れる北大西洋海流と偏西風の影響で、緯度が高いわりに温暖な気候となっている(49字)
キーワードを軸に、文字数を合わせるよう、大事な情報から付け加えていくように心がけてください。これは、他の記述問題にも応用できる『技術』です。
人物イラスト提供:アイキャッチャー様
コメント
雨温図の読み取り方がよくわかりました。ありがとうございます。
気温でもわかるんですね。
この前のテストの記述で特徴を答える問題が出ました。寒暖差が少ないまで書いて花マルもらえました(*´∇`*)
あまり暖かいを連呼しない方が良いとは思います
地理は高校では選択で有り中学校以降地理に触れない人がかなりいます
中学レベルでこの気候を教える場合最も大事な事は
冬の気温は日本の冬と同じくらい寒い
ロンドンとか北の方になると日本の東北と変わらない事を
印象に残す教育が将来的には重要と考えます
実際に地理は中学でおしまいの人がロンドンに暖かい印象で行く
事例が散見されます
読み返してみると「温」や「暖」を連呼していますね。
確かに、これでは暖かいという印象が強く残ってしまいます。
ロンドンに住んでいたことのある先生に実態を聞いて、追記をしました。
地域の生活を理解するのも中学地理の重要なポイントです。
テキスト上の知識だけでなく、地域の実態も限られた時間の中ですが生徒に印象付けられる授業ができるよう精進いたします。
ご指摘、誠にありがとうございました。
とてもよくまとまっていてこのまま授業に使いたいくらいです。
プロジェクターに映して使ってもよろしいでしょうか?
お褒めに預かり光栄です。
どうぞご利用ください。
分かりやすかったです
めちゃくちゃ分かりやすかったです!ありがとうございました😊