百人一首35番。紀貫之の歌の『花』はなぜ『梅』なのか?

某予備校のCMでも紹介されていましたが、百人一首の中にある紀貫之の歌について、歌の中に出てくる『花』という言葉。和歌では『花』と言ったらほぼ『桜』のことを指すのですが、この和歌では『梅』を指しています。では、なぜ『梅』になるのか、解説していきます。

和歌の紹介

問題となる和歌は以下の通りです。

歌番号35番
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香に匂ひける
(紀貫之)
かなな先生
この和歌を現代語訳してみましょう
じゃあ、あなたはどう思ってるの?人の気持ちは分からないけど、昔から知っている梅の花の香りは同じように匂ってるね。
生徒
えっと、どういう意味なんでしょうか?
かなな先生
これだけじゃ分かりにくいですね。実は、この歌には以下のような皮肉がこめられています
『人の心は変わる』こともあるけど、私には分からないよ。
昔からここにある『梅の花の匂いは変わらない』けどね。
生徒
誰かに向けて『あなたは心変わりしてしまった』って言ってるんですね。
かなな先生
その通りです。でも、なんで『花』が『梅』を指すのかは、この訳だけからはわからないですよね。
生徒
文法とか表現から分かったりしないんですか?
かなな先生
残念ながら分からないんですよ。
生徒
謎が残されますね。『梅』もそうですけど、『なぜ、皮肉を言いたかったのか』も…

このように、言いたいことは分かるけど、背景が分からないと正しい意味は分かりません。実はこの和歌は『古今集』に収められており、そこに書かれている『詞書(ことばがき)』を読むと意味が理解できます。

古今集の詞書を読んでみる

この和歌が最初に紹介されたのは平安時代の前期に編纂(へんさん:集めてまとめること)された『古今和歌集』です。『勅撰和歌集』といって醍醐天皇の勅命で『万葉集』に選ばれなかった和歌を編纂したものです。

かなな先生
当の紀貫之も和歌を選ぶ作業に加わってましたよ

生徒
自分のを選んでもよかったんだ

かなな先生
古今和歌集は全部で1111首ありますが、紀貫之の和歌は102首入ってます

その中の『巻第一・春歌・上042』にあるのが、以下のものです。

(詞書)
初瀬にまうづるごとに、やどりける人の家に、ひさしくやどらで、ほどへてのちにいたれりければ、かの家のあるじ、かくさだかになむやどりはある、と言ひいだして侍りければ、そこにたてりける梅の花を折りてよめる人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける

簡単に現代語訳をしてみると…

初瀬の長谷寺に参詣するたびに使っていた宿に、久しぶりに訪ねてみると、その宿の主が「このように宿は昔の通りありますのに…(あなたは心変わりされて、ずいぶんとご無沙汰なんですね)」と言ってきた。そこで、そばにあった花の付いた梅の枝を折って詠んだ和歌がこれです。

このように、詞書に『梅の花』と明記されています。さすがに和歌からだけでは判断ができません。また、皮肉を言いたくなったのは、宿の主に軽く嫌味を言われたので言い返したくなったのでしょう。
百人一首の意味を知るためには、このように元々の和歌を探ることも必要となってきます。これがなかなか面白いものです。ぜひ興味を持って調べてみてください。リクエストがあれば『質問投書箱』から受け付けております。

人物イラスト提供:アイキャッチャー様

スポンサーリンク




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク




%d人のブロガーが「いいね」をつけました。