「私能力は平均値でって言ったよね」の主人公はどうお願いしたらよかったのか

私能力は平均値でって言ったよね

最近はやりの『異世界』ファンタジーの小説です。

生徒の中にも大好きな子がいます。

その中の一つ、『私能力は平均値でって言ったよね』

現世では人よりも『できる人間』だったために、人間関係などで苦しんでいた主人公が異世界に飛ばされて望んだ能力。

それは『普通の能力しか持たない』人間になりたいということでした。

そこで神様(?)にお願いした時のセリフが『能力は平均値で』

この一言のために、常人では考えられない能力を得てしまった。

この物語が数学の授業で話題となりました。

平均値とは

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『平均値』とは、全てのデータの合計値をデータの個数で割った値のことです。

例えば、5人がテストを受けて以下の点数だったとしましょう。

35点・38点・40点・42点・45点

合計点は「35+38+40+42+45=200」で『200点』となります。

データの個数は『5人』なので『5』

では、計算してみましょう。

平均値:200÷5=40

このように、平均値として、『40』が算出されました。

平均値の弱点

生徒
じゃあ、なんで主人公はすごい力を持っちゃったの?
たぬぬ
それは作中にありますね。『この世界で最も強い出力の古代竜~』のところです。

先ほどの例を見てみましょう。

データとしては、35点・38点・40点・42点・45点が用意されていました。

ここに、100点を取ったA君を追加すると平均値はどうなるでしょうか?

合計点は「35+38+40+42+45+100=300」で『300点』となります。

データの個数は『6人』になったので『6』

では、計算してみましょう。

平均値:300÷6=50

平均値として、『50』が算出されました。

A君以外の子は平均値以下になってしまいますね。

このように平均値は極端なデータが入ることに弱いのです。

物語の世界の考えを少し入れてみた

生徒
A君以外が平均点以下になるのは分かったけど、でも極端な差はないと思うけど。
たぬぬ
それはテストという点数の限られた範囲、もうちょっと言うと上限下限が決まった世界での話だからです。
生徒
どういうこと?
たぬぬ
例えば……あなたはライオンに勝てますか?
生徒
無理無理!
たぬぬ
じゃあ、何人くらいいたら勝てそう?
生徒
武器持ってても100人は欲しい!

生徒は特に深く考えず、それでも大きな数字である100を選択したようです。

単純な話で申し訳ありませんが、ライオンは人間の100倍強いとしたら……

間の能力の範囲:1~100
ライオンの能力の範囲:1~10000

先ほどのテストの点数を強さとして計算してみると…

データの合計は「35+38+40+42+45+10000=10200」で『10200点』となります。

データの個数は『5人+1匹』なので『6』

では、計算してみましょう。

平均値:10200÷6=1700

平均値として人間の能力の範囲を超える『1700』が算出されてしまいました。

生徒
じゃあ、竜はライオンすらエサにしそうだから……

たぬぬ
とんでもない数値が出ますね。平均値の怖いところはここなんです。

物語の設定に穴は無いのか?

たぬぬ
原作を数話(小説家になろう)で読んでみたんですが、特にないですね。
生徒
平均値ってことは全部のデータ足すんでしょ?人間の数が多かったら良いんじゃない?

たぬぬ
確かにそうです。人間が古代竜に比べてたくさんいるとすれば、人間の平均値に近づきますね


生徒
じゃあ、問題ないんじゃない?

たぬぬ
ところが作者はこう設定してるんですよ。
引用:この世界における、魔力ゼロの者と魔力最大の者との丁度真ん中、ってことだ。丁度真ん中、最大値と最小値の平均。
生徒
……それ、平均値じゃない
たぬぬ
主人公も言ってますね。「平均値の定義ってそうじゃない!」「中央値ですらない」って。

人間が1億人、能力の平均値が100とします。

古代竜が100匹、能力の平均が100万(人間の1万倍)として計算してみると平均値は『約101』となります。

人間のデータの個数が多いと突出したデータがあったとしても人間の平均値に近づきますね。

しかし、最大値と最小値の平均(とは言いたくないが)をとってみると……

最小値1(人間)、最大値100万(古代竜)とする。
(1+100万)÷2=500000.5

『約50万』。つまり人間の平均値の『5000倍』の値が出てしまいます。
※説明のため、都合のいい数字を使っていますが、仕組みはわかってもらえたでしょう。

主人公はどのようにお願いしたらよかったのか?

生徒
じゃあ、なんて言えばよかったの?

たぬぬ
『平均値』という言葉を使うなら、対象の範囲を狭くする必要がありますね。

生徒
人間とか?

たぬぬ
そうです。もっと狭めるとしたら『人間の一般人』とかね。

生徒
『平均値』って言葉を使わないならどうするの?

たぬぬ
その場合は『普通の女の子になりたい』が一番いいと私は思いますよ。

生徒
そんなの面白くない。

たぬぬ
私もそう思います。

数学で使う言葉なら『中央値』『最頻値』『偏差値50』とかあるでしょうが、物語としてはつまらないものになりますね。

しかし、これらの言葉を使うにしても『人間の』という但し書きは必要でしょう。

データを扱う時には、何らかの要因で発生する突出したデータに気をつけなければなりません。

中学高校の数学では「突出したデータ」が含まれる問題はほとんど出ませんが、仕事や自由研究などをやっている時に出てくるかもしれません。

今回の話を頭の片隅においておくと、その時に役に立つと思います。

※この記事を書くために原作を読んでみたのですが、軽く100話まで読んでいたところで、嫁さんから怒られました、「早く寝ろ」って。

かなな先生
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人物イラスト提供:アイキャッチャー様

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コメント

  1. マルセラ弟 より:

    この小説が好きで読んでたんだけど、今アデルがなんであんなに強くなったのか理解できた気がします。
    冬休みなのでもう一度最初から読んでみる。

    • jhs-teachers より:

      私もお正月休みで読み返してしまいました。
      また嫁さんに怒られましたよ。

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