理科の実験で使う『ガスバーナー』。
生徒からの質問で多いのは『ガスバーナーの火は逆流しないの?』というもの。
結論から言うと『逆流しません』。
では、その仕組みを考えてみましょう。
ガスが燃えるときに必要なもの
ガスは基本的に『炭素』と『水素』の化合物です。炭化水素と呼ばれています。
理科の実験に使うガスにはこれらのガスが使われています。
そして、これらのガスは酸素を取り込んで燃焼し、二酸化炭素と水(水蒸気)を発生させます。
代表的な炭化水素の燃焼の化学反応式は以下の通りです。
このように、理科の実験で使うガスの燃焼には必ず『酸素が必要』となるのです。
火が逆流しない理由
では、なぜ火は逆流しないのか。ここでは2つの理由を紹介したいと思います。
理由1:酸素がないから
最大の理由はコレです。
ガスは酸素がないと燃焼しないのです。図解で見てみましょう。
ガスボンベ→ホース→ガスバーナーという経路がありますが、この中に『酸素』もしくは『酸素を含んだ空気』が入る余地があるでしょうか?
正しい器具を正しく設置している限り外から空気が入ることはありません。
だから、ホース内のガスに火が付くことはないのです。
また、『ガスだけでも燃焼する』と仮定したら、正常な着火手順にある『ガス調整ネジを回してガスを出して着火』の段階で逆流するはずです。
でも実際にはそんなことは起こらないので、『ガスだけで燃焼する』という仮定が間違えている、つまり『ガスだけでは燃焼しない』となるのです。
理由2:ガスの圧力
シャボン玉を作るときのことを考えてください。
ふくらましているときに、シャボン玉が縮んで吹き込んだ空気が逆流してくるでしょうか?
逆流してこないのは、吹き込む勢い(圧力)の方が『大気圧』より大きいからです。
ガスボンベの圧力は1MPa(メガパスカル)以上は確実にあります。
対して大気圧は平均1013hPa(ヘクトパスカル)です。
単位が違ってわかりにくいので単位をあわせて見ましょう
大気圧:1013hPa=101300Pa
ガスボンベからガスを出す圧力は、大気圧の10倍近くとなっています。
ガスの燃焼には酸素が必要なので、炎の逆流が起こるためにはホース内に空気が入り込まないといけない。
でも、ボンベから10倍の力で押し返されている。
つまり、『ホース内に空気が入ることは出来ない』ということです。
まとめ
正しい手順で操作をすると、安全に実験器具を使うことが出来ます。
炎・ガスと聞いて危険なことは『ガス爆発』ですが、少なくとも逆流して爆発が起こるわけではないことはわかりました。
この知識があるだけでも、点火消化手順を『安心して』行えます。
用意された手順で安全に作業すること、プラス、知識を持って『安心』して作業することで、より安全な実験ができるのです。
なぜその手順になるのか、どのようにして危険を回避しているのかも考えるようにしましょう。
人物イラスト提供:アイキャッチャー様
コメント
塾では手順を守らないと炎が逆流すると教えてもらったのにどっちが正しいんだろうと思っていましたが、理由1の仮定の話を聞いて納得しました。