ある品物を消費税込みでキリのいい金額で売りたい場合どうするか?
それは(売値)÷1.1をして、小数点以下を切り上げすることで大体は求められます。
いろいろな金額で計算したところ、ある程度の法則があることがわかりました。
中学2年レベルの数式の証明を交えて解説します。
消費税込みでキリのいい値段にするときの元の値段
計算の前提として、消費税をかけた後の金額の小数点以下は切り捨てます。
例えば、税込み800円にしたい場合……
800÷1.1=727.2727……
小数点以下をくりあげて、「728円」とすると、税込み「800円」になります。
1000円未満で見てみると……
91円 → 100円
182円 → 200円
273円 → 300円
364円 → 400円
455円 → 500円
564円 → 600円
637円 → 700円
728円 → 800円
819円 → 900円
なお、税込み1000円にしたい場合、小数点以下切り捨て方式だと面倒くさいことになります。
(税抜き)→ (×1.1) → (税込み)
909円 → 999.9円 → 999円
910円 → 1001円 → 1001円
税込み1000円にしたければ、909.1円とかにすればいいのですが、そのあたりはお店の判断になるんでしょうね。
法則性を見つける
例えば「税込み300万円」のように大きな金額だとわかりやすくなります。
税込み300万円の税抜き額は「2,727,273円」。
2と7が繰り返されていることから、何らかの法則性があるかと思われます。
試しに4桁の金額で考えてみます。
千の位の数字をa、百の位をb、十の位をc、一の位をdとします。
例)「1357円」ならば「a=1,b=3,c=5,d=7」
元になる4桁の金額は「1000a+100b+10c+d」で表すことができます。
元の値段の10%は「100a+10b+c+0.1d」となり、小数点以下を切り捨てると「100a+10b+c」となります。
これらを足すことで、消費税10%がかかった金額が出ます。
(1000a+100b+10c+d)+(100a+10b+c)
=1000a+100(a+b)+10(b+c)+(c+d)
ここで、キリのいい数字ということはもとになる4桁の金額で一・十・百の位を0にすることです。
くりあがりを考慮すると……
a+b=9 …(1)
b+c=9 …(2)
c+d=10 …(3)
これらを満たせばよいことがわかります。
すると(1)より b=9-a …(4)
(4)を(2)に代入すると c=9-b=9-(9-a)=a …(5)
(5)を(3)に代入すると d=10-c=10-a
これらを元になる値段に代入すると……
1000a+100(9-a)+10a+(10-a)
となることがわかります。
5桁の場合も計算してみます。
万の位をa、順にb,c,dと置き、一の位をeとする。
4桁の場合の手法で計算していくと、最後に「e=a+1」となり……
10000a+1000(9-a)+100a+10(9-a)+(a+1)
となります。奇数桁と偶数桁で式の形が変わります。
式に対する考察
「消費税込みでキリのいい値段にするときの元の値段」を考えています。
ここまでは数式を使って元の値段(税抜き価格)を考えていました。
その式がこちらです。
奇数桁:1000a+100(9-a)+10a+(10-a)
偶数桁:10000a+1000(9-a)+100a+10(9-a)+(a+1)
まず、特徴的なところを考えてみます。一の位以外は”a”と”9-a”の繰り返しがありますね。これは各桁に使われている数字になります。
例を挙げると「1234」という数字の場合、百の位に使われている数字は「2」ということです。
そこで、これら隣り合う桁の数字を加えてみると……
a+(9-a)=9
となります。
これは、隣り合う桁を加えると必ず9になるということです。
では十の位と一の位はどうなっているか?
同じように加えてみましょう。
奇数桁:a+(10-a)=10
偶数桁:(9-a)+(a+1)=10
となり、十の位と一の位を足すと必ず10になることがわかります。
式に対する検証
「消費税込みでキリのいい値段にするときの元の値段」は、一の位を除く桁で『隣り合う桁の合計が9』であること、『十の位と一の位の合計が10』であることが必要であるとわかりました。
では、実際に試してみましょう。
まずは3万円ぴったりを出してみます。
一万円の位は2となるので、千の位は「9-2」で7。
百の位は「9-7」で2。十の位は「9-2」で7。
一の位は十の位と足すと10になるので「10-7」で3。
つまり、27273円となります。
実際に計算してみると……
27273×1.1=30000.3
となり、小数点以下を切り捨てて3万円になりました。
4000円なら「3637円」、50万円なら「454546円」。
千円までは上で紹介していますが、確かにこの法則に当てはまります。
(税抜き)→(税込み)
91円 → 100円
182円 → 200円
273円 → 300円
364円 → 400円
455円 → 500円
564円 → 600円
637円 → 700円
728円 → 800円
819円 → 900円
千円、1万円などの桁上がりの時は?
奇数桁:1000a+100(9-a)+10a+(10-a)
偶数桁:10000a+1000(9-a)+100a+10(9-a)+(a+1)
これらの式の一の位に注目してみましょう。
桁があがるときのaの値は9です。
すると、奇数桁の場合は1となってしまいます。
例えば1000円(4桁)にしたいとき、元の金額は3桁の金額となりますので、奇数桁,a=9を利用します。
すると、一の位は10-9=1となってしまい、キリのいい1000円にはならないのです。
対して、偶数桁の式では一の位が「a+1」ですので、a=9の場合でもきれいに「0」が出てきてくれるのです。
このことから、1000円や10万円など、桁上がりして偶数桁(桁上がり前が奇数桁)の場合、元の金額が整数であるとキリはよくならないことがわかりました。
さいごに
今回の計算は、今後の日常生活で一ミリも役に立たないことかもしれません。
計算機があれば数分で法則もきっかり1000円に出来ないこともわかるでしょう。
しかし、あえて数式を使うことで頭の体操や式の分析の力が付きます。
特に、今回の計算は中学2~3年生にとって有益なものになります。
この内容は当塾での特別授業で行ったものです。
通常の数式の証明の授業より生徒の食いつきがよかったですね。
授業感想の中で一番印象深かったのは「日常生活で役に立つとはおもえないけど面白かった」というものです。
役に立たない・無駄とわかっていても面白いと感じることのできる感性を持ってくれていてうれしかったですね。
人物イラスト提供:アイキャッチャー様