中学でも高校でも数学では「公式」が大量に出てきます。
値を当てはめるだけで答えが出てくれる便利な「道具」なのですが、塾生から面白い質問がありました。
確かに、公式を使う……値を形に当てはめて答えが出る。
数学で求められる思考を一切放棄した行為に思えます。
しかし、最初にも書いた通り、公式は「道具」なのです。
公式は「道具」として使うもの
これは、中学高校の数学の授業で私がいつも生徒に言っていることです。
「公式を使う」意味をしっかりと理解した上で、公式を使うことに意義があるからです。
公式は「思考の時間」を稼ぐ道具
公式のほとんどは所詮「計算を簡単に済ませる道具」です。
言い換えれば「時短アイテム」。
公式を使い計算の手間をある程度省くことで出来た時間は「思考」に使えます。
また、計算の手順をシステム化することで「精度」も上げられます。
計算ミスのリスクを少なくすることで安心して「思考」することができます。
これが公式の意味なのです。
状況を判断をする能力を身につける道具
公式は決まった条件を満たさないと使えません。
その条件を見極められる能力が必要です。
そのトレーニングとして公式が使われたりします。
また、同じ問題でも使える公式がいくつもある場合があります。
例を挙げると中3の2次方程式。
おそらく、多くの方は次の順番で解けるか確認するはずです。
1.共通因数を探す。
2.因数分解できないか探す。
3.解の公式を使う。
※「平方完成」という手段もありますが、これを公式化したものが「解の公式」ですので除外しました。
特に、2次方程式の場合、因数分解で解けるのに解の公式を使ってしまったなんてことがあるかと思います。
前節の「時短」を目的とするのであれば、もっと目的に沿った公式があり、少し時間をロスしていることになるのでもったいないですね。
中学のテストでは、公式を使って解く問題が多数出題されます。
これは、計算能力はもちろん、問題を見てどの公式が使うかという判断能力も見るためです。
計算を簡略化する能力を身に着ける道具
同じような計算がたくさんある場合、多くの人はめんどくさく感じるでしょう。
計算が「手段」である場合、なるべく簡単に済ませたいものです。
この簡単にする仕組みの一つが「公式」なのです。
前出の二次方程式の場合、ちゃんとした解き方?は「平方完成」ですが、一般的な形を平方完成で解いた結果を「公式」としています。
中学高校と公式はすでに準備されています。
しかし、このように公式を導く過程を経ることで、計算への理解が深まりますし、自分だけの公式を導き出せるきっかけともなります。
さいごに
公式は計算を楽にしてくれるだけではありません。
「思考」を助けてくれる道具であるという考えを持っていただければ、公式に対する考え方も変わってくるかと思います。
「社会に出て数学なんて役に立たない」という意見の反論として「数学的思考」が必要だというものがあります。
目的達成のための手段の簡略化、これも「数学的思考」の一つなんです。
人物イラスト提供:アイキャッチャー様